自動車産業が20世紀において最も成功した産業のひとつであることは疑いない。その技術は動力性能、安全、コスト、品質管理などにおいて非常に洗練された域に到達しており、20世紀の技術全体を引っ張ってきた。しかし、20世紀の最後の四半世紀には、地球環境問題をはじめとする様々な問題があらわになり、乗用車と社会の関わりを見直す必要に迫られているのも事実である。
 一方ロボティクスは、長年、産業機械として自動車産業を支えてきたが、近年のヒューマノイド研究の隆盛に見られるように、21世紀には市民社会に直接導入される技術として注目され、期待されている。私たちは、新しい技術の芽であるヒューマノイド・ロボット・テクノロジーを、成熟した自動車技術と融合させることで、新世代の乗り物を提案できるのではないかと考えた。百年前からほとんど変わっていない乗用車の基本原理が、そろそろ変わっても良いのではないだろうか。